蜘蛛の糸
蜘蛛の糸
阅读时间:2023年7月2日至2023年7月2日
一
- 蜘蛛 くも
- 糸 いと 纱线。用于纺织、手工编织、缝衣、刺绣等。 (乐器的)弦。琴弦。筝。三弦。弹筝、三弦(的人)。 鱼线。钓丝。(釣糸。)
- 蕊 ずい 池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色(きんいろ)の蕊からは、何とも云えない好い匂いが、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
- 水晶 すいしょう この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途(さんず)の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。
- 大泥棒 おおどろぼう 大盗。 この犍陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。
二
- 責め苦 せめく 责罚、折磨。 これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の責苦に疲れはてて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。
- 蛙 かわず 青蛙。(同かえる。) ですからさすが大泥坊の犍陀多も、やはり血の池の血に咽びながら、まるで死にかかった蛙のように、ただもがいてばかり居りました。
- 手繰る たぐる 牵。拉。勾。 こう思いましたから犍陀多は、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。
- 一休み ひとやすみ 休息片刻,歇一会儿。 そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。
- しめた 好极了,太好了,太棒了。(思った通りになって喜ぶ時の言葉。) 犍陀多は両手を蜘蛛の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。
- せっせと 孜孜不倦地。(仕事などを、休まずに一生懸命にするさま。) が、そう云う中にも、罪人たちは何百となく何千となく、まっ暗な血の池の底から、うようよと這い上って、細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。
- 独楽 こま 陀螺。(子供の玩具。円い木製の胴に心棒(軸)を貫き、これを中心として回転させるもの。種類が多い。多く、正月の遊びの具とする。) あっと云う間もなく風を切って、独楽のようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
三
- なさる (“なす”、“する”的尊他语)为,做,干。(「する」「なす」の尊敬語。) 接在动词连用形后表示尊敬之意。(動詞の連用形に付いて、尊敬の意を表す。) 御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて犍陀多が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。
- 無慈悲 むじひ 冷酷无情,狠毒,毒辣,残忍。 自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまった。
- 思し召す 思召す おぼしめす 「思う」の尊敬語。 御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
摘抄
- 自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅ましく思召されたのでございましょう。
大正七年四月十六日
底本:「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
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