夢十夜

阅读时间:2024年10月19日

感想

確かに、タイトルと冒頭「こんな夢を見た」を見ていると、黒澤明の映画『夢』を思い出させますね。その内容もまた夢の世界を描いています。最初の物語はとても感動的で、百年もの時が過ぎた後、一輪の百合が静かに咲きました。まるで、そばにいるあの女性(母親でしょうか?)が転生してきたかのようです。さらに、明治時代を批判する物語も少なくなく、例えばこんな一文がありました。「私が知らなかったのは、明治の木にはもう仁王がいなかったことだ。だから、どんなに彫っても、運慶のような荘厳な仁王は掘り出せない。」そして、理髪店の場面では夢の奇妙さと滑稽さを感じさせられ、筋道や論理性がまったくない感じです。さらに、船から身を投げる話もあり、飛び込んだ瞬間に、自分は死にたくなかったことに気づくんです。船がどこへ向かうかは分からないけれど、そのまま船に残って、目的もなく生き続けるのも悪くないなと。夏目漱石は自分の夢を描くことで、「夢」と称しつつも、実は自分の恋愛、生命、そして時代に対する思いや考えを表現しています。結局、夢なんてものは、人類が何百年も研究しても解明されていません。それは脳髄の副作用にすぎないのでしょうか?(笑)つい夢野久作まで話が飛んでしまいました。

語彙

第一夜

  1. 真珠貝 しんじゅがい 海螺的别称。海螺科的双壳贝。 「死んだら、埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)を墓標(はかじるし)に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢いに来ますから」

第二夜

なし

第三夜

  1. 盲目 もうもく 没有理智。 自分はこの言葉を聞くや否や、今から百年前文化五年の辰年のこんな闇の晩に、この杉の根で、一人の盲目を殺したと云う自覚が、忽然として頭の中に起った。

第四夜

なし

第五夜

  1. 篝火 かがりび 大将は篝火で自分の顔を見て、死ぬか生きるかと聞いた。これはその頃の習慣で、捕虜(とりこ)にはだれでも一応はこう聞いたものである。生きると答えると降参した意味で、死ぬと云うと屈服(くっぷく)しないと云う事になる。自分は一言死ぬと答えた。
  2. 勇ましい いさましい 勇敢,勇猛。 暗闇を弾き返すような勇ましい音であった。

第六夜

  1. 下馬評 げばひょう 社会上的传说,风评。 評判 ひょうばん 风传,传闻;风言风语『成』;轰动。=うわさ 運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評をやっていた。
  2. 甍 いらか 屋顶瓦。 山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹が斜めに山門の甍を隠して、遠い青空まで伸びている。
  3. 見物人 けんぶつにん 游客,观众。 その様子がいかにも古くさい。わいわい云ってる見物人とはまるで釣り合が取れないようである。自分はどうして今時分まで運慶が生きているのかなと思った。どうも不思議な事があるものだと考えながら、やはり立って見ていた。
  4. 我々 われわれ 我们,咱们,我等。 天晴 あっぱれ 非常好,漂亮;值得佩服;惊人。 「さすがは運慶だな。眼中に我々なしだ。天下の英雄はただ仁王と我とあるのみと云う態度だ。天晴だ」と云って賞め出した。

第七夜

  1. 舳先 へさき 船首,船头。 
  2. 異人 いじん 异人,奇人,外国人,西洋人,别人,不同的人。 乗合はたくさんいた。たいていは異人のようであった。しかしいろいろな顔をしていた。
  3. 唱歌 しょうか ピアノを弾いていた。その傍に背の高い立派な男が立って、唱歌を唄っている。
  4. 否でも応でも いやでもおうでも 不管愿意不愿意,不论如何。 自分は厭でも応でも海の中へ這入らなければならない。

第八夜

なし

第九夜

  1. 銀杏 いちょう 塀(つちべい)の続いている屋敷町を西へ下って、だらだら坂を降り尽くすと、大きな銀杏がある。
  2. 鈴 すず その鈴の傍に八幡宮(はちまんぐう)と云う額が懸っている。

第十夜

  1. 水菓子 みずがし 水果。 水蜜桃 すいみつとう 枇杷 わ あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている。水菓子にはいろいろある。水蜜桃や、林檎や、枇杷や、バナナを綺麗に籠に盛って、すぐ見舞物に持って行けるように二列に並べてある。
  2. 無尽蔵 むじんぞう 无穷尽。 黒雲に足が生えて、青草を踏み分けるような勢いで無尽蔵に鼻を鳴らしてくる。

文句

  1. すると石の下から斜(はす)に自分の方へ向いて青い茎(くき)が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ぐ茎の頂きに、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹えるほど匂った。そこへ遥の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。

    「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

  2. もし悟れなければ自刃(じじん)する。侍が辱(はずか)しめられて、生きている訳には行かない。綺麗に死んでしまう。

  3. 自分は一番大きいのを選んで、勢いよく彫り始めて見たが、不幸にして、仁王は見当らなかった。その次のにも運悪く掘り当てる事ができなかった。三番目のにも仁王はいなかった。自分は積んである薪を片っ端から彫って見たが、どれもこれも仁王を蔵くしているのはなかった。ついに明治の木にはとうてい仁王は埋まっていないものだと悟った。それで運慶が今日まで生きている理由もほぼ解った。