D坂の殺人事件

阅读时间:2023年7月3日

(上)事実

  1. 初旬 しょじゅん 初旬,上旬。月初的十天。(月の初めの10日間。上旬。) それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。
  2. 出入 しゅつにゅう 出入,来往。(出ることと入ること。また,出たり入ったりすること。でいり。) この白梅軒(はくばいけん)というのは、下宿屋から近くもあり、どこへ散歩するにも、必ずその前を通る様な位置にあったので、随って一番よく出入した訳であったが、私という男は悪い癖で、カフェに入るとどうも長尻(ながっちり)になる。
  3. 店先 みせさき 商店的门前,店头。(店の前。また、そのあたり。店頭。) 実は私は、先程から、そこの店先を眺めていたのだ。
  4. 店番 みせばん 商店看管人,看柜台的人。 彼女は夜はいつでも店番をしているのだから、今晩もいるに違いない。
  5. 女房 にょうぼう 妻子。(妻。) 日本中世、近世时期对妇女或女子的称呼。(婦人。)
  6. 万引き まんびき 扒窃商店物品。偷东西。顺手牵羊。 古本屋などというものは、万引され易い商売。
  7. 障子 しょうじ (用木框糊纸的)拉窗,拉门,纸拉门,纸拉窗。
  8. 棚卸し たなおろし 盘货,盘点存货。为了决算或每月的损益计算等,对手头现有的商品、原材料和产品等资产的种类、数量、价格进行调查和评估。 何でも、銭湯で出逢うお神さんや娘達の棚卸の続きらしかったが、「古本屋のお神さんは、あんな綺麗な人だけれど、裸体になると、身体中傷だらけだ、叩かれたり抓られたりした痕に違いないわ。
  9. 辿る たどる 沿路前进;边走边找。追寻,追溯,探索。 私が一つの所を見詰めているのに気づくと、彼はその私の視線をたどって、同じく向うの古本屋を眺めた。
  10. 呉れる くれる
  11. 長方形 ちょうほうけい 长方形,矩形。 これも本を並べたり積上げたりする為の、長方形の台が置いてある。
  12. 死骸 しがい 尸体,尸首,遗骸。 明るくなった部屋の片隅には、女の死骸が横わっているのだ。
  13. かり 线索,头绪,端绪。 近所へはまだ知らせない方がいいでしょう。手掛りを消して了ってはいけないから。
  14. 一間 ひとま 一间(房间)。一室。 部屋は一間切りの六畳です。
  15. 凶行 きょうこう 凶恶的犯罪行为,行凶。 私は、なるべく兇行当時の模様を乱すまいとして、一つは気味も悪かったので、死骸の側へ近寄らない様にしていた。
  16. 併し 然し し
  17. 紫色 むらさきいろ 
  18. 横たわる よこたわる 躺卧。(横になる。) ベッドに横たわる。 迫在眼前,横在前面。〔前にひかえている。〕 目の前に危険が横たわる。
  19. 大儀 たいぎ 麻烦,费劲。 毎日行くのが大儀だ。 私は何だか口を利くのも大儀になっていた。二人は長い間、一言も云わないで顔を見合せていた。
  20. 閉まる しる 关闭,紧闭;被关闭,被紧闭。 ふと目を上げてこの障子の方を見ますと、障子は閉まっていましたけれど、この格子の様になった所が開いてましたので、そのすき間に一人の男の立っているのが見えました。 关门,下班。停止营业。(終業する。) 銀行は三時で閉まる。
  21. 陳述 ちんじゅつ 彼等の陳述は、この事件を益々不可解にする様な性質のものだったのである。
  22. 隣家 りんか 邻家、隔壁。(となりの家。)
  23. 野次馬 弥次馬 やじうま (跟在后面)起哄怪叫奚落(的人们)。 そうこうする内に、近所の人達が聞伝えて集って来たのと、通りがかりの弥次馬で、古本屋の表は一杯の人だかりになった。
  24. 傍若無人 ぼうじゃくぶじん 彼のやり方は如何にも傍若無人で、検事や署長などはまるで眼中にない様子だった。
  25. 御座います ございます 有。(「ある」の意の丁寧語。「あります」より丁寧な言い方。) それも御座いません。皆さん私の目の前でアイスクリームを食べて、すぐ元の方へ御帰りになりました。それはもう間違いはありません。
  26. 潜伏 せんぷく 潜伏,躲藏,隐藏。 どこかの家に潜伏しているか。
  27. 無地 じ 素色。(全体が一色。)私の目には黒無地に見えました。 無地の着物。
  28. 諄い くい 冗长乏味,啰嗦,叨唠,喋喋不休。 拘らず かかわらず 不论不管虽然…但是。 ところが、その理由については、くどく訊ねられたにも拘らず、余り明白な答は与えなかった。
  29. 帰途 と 归途。(帰りみち。帰路。) 私達は住所姓名などを書留められ、明智は指紋をとられて、帰途についたのは、もう一時を過ぎていた。
  30. 国許 くにもと 故乡出生地本国。 被害者の国許も取調べられたけれど、これ亦、何の変った事もない。

(下)推理

  1. 予て ねて 以前,先前,老早。(前もって。あらかじめ。前々からずっと。) それまで、明智とはカフェで顔を合していたばかりで、宿を訪ねるのは、その時が始めてだったけれど、予て所を聞いていたので、探すのに骨は折れなかった。
  2. 一寸 ちょっと 一寸お待ちください。
  3. 人世 じんせい 人世,人世间,人间。(人間の生きていく世の中。世間。) 併し彼とは昨今のつき合いだから、彼がどういう経歴の男で、何によって衣食し、何を目的にこの人世を送っているのか、という様なことは一切分らぬけれど、彼が、これという職業を持たぬ一種の遊民であることは確かだ。
  4. 縮小 しゅくしょう 缩小,缩减。 これでは単に捜査範囲が縮小されたという迄(まで)で、まだ確定的のものではありません。
  5. 寸分 すんぶん (后接否定)微少,些许,一点点(都没有)。 もし前後の指紋が全く同じもので、捺し方も寸分違わなかったとすれば、指紋の各線が一致しますから、或は後の指紋が先の指紋を隠して了うことも出来るでしょうが、そういうことは先ずあり得ませんし、仮令そうだとしても、この場合結論は変らないのです。
  6. 抜け目 ぬけめ 疏漏,纰漏,破绽,遗漏。疏忽。(手抜かり。手落ち。心配りの足りないところ。) 併し、殺人があった以上、犯人が出入しなかった筈はないのですから、刑事の捜索にどこか抜目があったと考える外はありません。
  7. 一介 いっかい 一介,(仅仅是)一个。 警察でもそれには随分苦心した様子ですが、不幸にして、彼等は、僕という一介の書生に及ばなかったのですよ。
  8. 発掘 はっくつ 彼はそういって、彼の身辺の書物の山を、あちらこちら発掘していたが、やがて、一冊の古ぼけた洋書を掘りだして来た。
  9. 後略 以後從略,後部省略。(文章のあとの部分を省くこと。)
  10. 着眼 着眼,注目。(物事をしたり考えたりするために、特定のところに目をつけること。その目のつけかた。また、目のつけどころ。着目。) 浴衣を思付いた君の着眼は、却々面白いには面白いですが、あまりお誂向(あつらえむき)すぎるじゃありませんか。
  11. 重きを置く 认为…重要。 兎も角、僕は今度はそういう方面に重きを置いてやって見ましたよ。
  12. 嫌疑 けんぎ 嫌疑。(犯罪事実があるのではないかといううたがい。容疑。) 嫌疑をはらす。
  13. 種々 しゅじゅ 种种,各种;多种;多方。 洞察力 どうさつりょく  天稟 てんぴん 心理学者の種々の機械的方法は、唯こうした天稟の洞察力を持たぬ凡人の為に作られたものに過ぎませんよ。
  14. 手を束ねる てをつかねる 束手,袖手,坐视。(腕組みをする。また、傍観する。) それに、僕が犯人を知りながら、手を束ねて見ているもう一つの理由は、この犯罪には少しも悪意がなかったという点です。
  15. 晦ます くらます 隐藏。(どこにいるのか、わからないようにする。) 彼は罪跡(ざいせき)をくらます為にあんな便所を借りた男のことを云ったのですよ。
  16. 創案 そうあん 发明,首创,发明的东西。(初めて考え出すこと。また、その考え。思いつき。) いや、併しそれは何も彼の創案でも何でもない。
  17. 色情 しきじょう 色情的。
  18. 辛うじて かろうじて 好不容易才…;勉强地。(余裕はほとんどないがなんとく実現するさま。) 彼等は、最近までは、各々、正当の夫や妻によって、その病的な慾望を、かろうじて充していました。
  19. 倍加 ばいか 加倍,倍增,多倍。 狂態が漸次(ぜんじ)倍加されて行きました。

2023年7月21日读毕